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復興まちづくりのきっかけとなる「キモチ、あつまるプロジェクト」を開催:(第3回)「#Interviews まちづくりってどんな人が携わる?」

UR都市機構(以下UR)の事業のひとつに、震災復興支援があります。2011年に発生した東日本大震災の原子力発電所事故による被害が大きかった福島県において、URは、都市再生や賃貸住宅のノウハウを活かし、浪江町、大熊町、双葉町とそれぞれ協定を結び、復興まちづくりの計画段階から町の新しい拠点の基盤整備や、公的施設(役場の庁舎など)を建設する際の技術支援などを行っています。しかし、そうしたハードをただ整備するだけでは、本当の意味での“まちづくり”とは言えません。

JR常磐線の双葉駅周辺(撮影:新潮社 菅野健児)

そこに住む人たちの声を聞き、住人の方たちが自らまちづくりに前向きに関わり、関わる人たちがだんだんと増えていく。そうしたソフト面からもまちづくりを進めるために、これまでもURでは福島県の地域の人たちと交流してきました。


地域との交流と「復興まちづくり」

浪江町では駅前交流スペース「なみいえ」でのイベントを通して、新たな交流が生まれています。大熊町では「KUMA・PRE」という活動拠点を設け、実証実験などを行う拠点として人と人がつながるきっかけとなるさまざまな催しを継続的に開催しています。発災から11年半後にようやく町民が戻れるようになった双葉町でも「ちいさな一歩プロジェクト」と題して、空き地や空き店舗を活用しながら、まちにとって必要なものは何なのかを意見交換するイベントを開催してきました。

大熊町とURが連携し、JR大野駅前の復興まちづくりの推進に向けてオープンした
地域活動拠点「KUMA・PRE」

少しずつ地域のにぎわいや交流が生まれ始め、復興まちづくりは今日も進んでいますが、このまちづくりの歩みをさらに進めるためには、復興に関わる人や地域の人と交流する人々をもっと増やしていく必要があると実感しています。そのためにもこれから未来を歩む世代の方々に被災地域のことをもっと知ってもらい、復興に関心を持ち、行動するきっかけ作りをしたいという思いから、この度私たちは「キモチ、あつまるプロジェクト」をJTBさんなどに協力いただき立ち上げることにしました。

「キモチ、あつまるプロジェクト」公式サイトより

復興に関わる人や地域の人たちとつながるきっかけを。「キモチ、あつまるプロジェクト」

このプログラムでは、2023年8月29日(火)~31日(木)、復興まちづくりに興味のある学生のみなさんに福島県に来てもらう「現地滞在プログラム(ふくしま浜通り未来へのまちづくりスタディツアー)」を行います。ここでは、現地で復興に携わる方々との交流会や、URが行うまちづくり支援の現地フィールドワークを通して、これからの復興についてさまざまなアイディアや意見を出しあい、復興への想いを共有してもらうことで、これからのまちづくりへの参加のきっかけを提供したいと思っています。

その現地滞在プログラムに先立って、先日6月3日(土)、東京にあるクラフトビレッジ西小山にてその事前オリエンテーションイベントを行いました。

イベントでは、URが行う復興支援の紹介やプログラムの説明、そして福島の復興にさまざまな形で関わられているゲストの方々をお呼びしてのトークセッション(オンライン)や、交流会を実施しました。

第一部、トークセッションのライブビューイングの様子

第一部のトークセッションには、アーティスト・フィールドデザイン・ ディレクターとして活躍するCANDLE JUNEさん、LOVE FOR NIPPON双葉支部支部長の舞木勝さん、映像ディレクターの官林春奈さん、アートディレクターの馬場立治さんが登壇。3.11以降、福島の復興に対して取り組んでいらっしゃる支援活動について語っていただきました。

第二部では、福島の復興について、学生のみなさんがどのようにしたらいいのか、どのような未来を描いていくかなど、第一部で講演をいただいた方々、復興事業に携わるUR職員、そして参加者のみなさん同士で意見を交わしました。

第二部の交流会で、参加者と話す馬場立治さん(写真中央)

復興に対する思いや願いなど、お互いの意見を交わした交流会は、8月に開催される現地滞在プログラムへ向け、復興について考える、良いオリエンテーションの場になりました。

第二部で開催された交流会の様子

人と人との繋がりを増やしていくまちづくり

今回、URの職員として現地で復興まちづくりに携わる、町井智彦からも現地の活動状況や本プロジェクトに対する想いを聞いてみました。

UR都市機構 町井智彦

UR都市機構東北震災復興支援本部
町井智彦

―まちづくりの活動の一つとして、ソフト面の支援がありました。住民の方々との関係性やこれまで行ってきたプロジェクトのなかで、特に思い入れのあることはありますか?

住民の方々と一緒に進めるまちづくりでは、人と人をつなげながらまちづくりに関わる人を増やすことが大事だと考えています。そのために私が担当している双葉町でも「ちいさな一歩プロジェクト」と題し町役場や町内事業者の方たちと共にイベントを実施していますが、このイベントを通じて、双葉町の内外を問わず多くの人が繋がり始めています。浜通りには素敵な方が本当にたくさんいらっしゃるのでこの取り組みを通じてそういった方々が出会い、繋がっていくことは嬉しいと思いましたし、将来的には住民の方と、興味を持って下さった方々たち同士が手を取り合って新しいまちを作っていけるような関係を築けるように、我々も頑張りたいと思っています。

UR都市機構 町井智彦

―まちづくりに携わるにあたって重要だと思うマインドや考え方はありますか?

新しい企画などを提案する際にはこちらの考えを押し付けることにならないように気を付けています。もちろん提案することも大事なのですが、その内容が町のみなさんが思い描いているものからずれていては意味がありません。一緒に話を重ねる中で、町のみなさんが本当にやりたいことをしっかりと汲み取り、それに対して私たちが提供できる価値は何かを意識しています。

―今回の「キモチ、あつまるプロジェクト」にかける期待を教えてください。

福島県の被災地には普段からたくさんの学生が視察や修学旅行で訪れますが、伝承館や新しい施設を回るだけということも多く、地元の方々と接触する時間が少ないことが以前から気になっていましたし、地元の方々もそれに悩んでいると思います。ですので、このプロジェクトを通してそうした福島のリアルがきちんと学生の皆さんに伝わり、深く考えるきっかけになったらいいなと思っています。今後福島がどうなっていくのがいいのか、福島についてどう発信していくのがよいのかを考えていただければと思っています。そしてこのプロジェクトをきっかけに、そのあとも福島に行きたいから自分で行く、会いたい人がいるから行くというような関係を作ってもらえると良いなと思っています。

第二部の交流会で、学生と復興まちづくりに関してさまざまな意見を交わす町井

町井さん、ありがとうございました!

今回、「キモチ、あつまるプロジェクト」をご紹介しましたが、未来を担う学生のみなさんには、ぜひ復興の今を知っていただき、何かを感じ取りながら、それぞれに合ったかたちで“福島に関わる人”になってもらえたらと私たちは考えています。

「キモチ、あつまるプロジェクト」については是非、こちらの公式サイトから詳細をご覧ください。

取材・執筆:日暮まり
写真:近藤俊哉
編集:福津くるみ


2023年8月29日(火)~31日(木)に行われた「現地滞在プログラム(ふくしま浜通り未来へのまちづくりスタディツアー)」の様子も公開しています。ぜひこちらの記事も御覧ください。


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