藤枝~おもしろフードカルチャーが根付くサッカーのまち~(第8回)「#エモ街」
懐かしくて新しい“エモ”な街を巡る連載「#エモ街」。8回目となる今回は、静岡県藤枝市を訪れます。
食に文化にスポーツに。たくさんの魅力が詰まったまち
静岡県藤枝市。静岡県の中心部に位置し、JR静岡駅から東海道本線で約20分、東京からも新幹線を利用すれば約1時間半程度で行くことができます。
市の北部は赤石岳の南端にあたり、車で20分ほど南下すれば駿河湾も臨め、海と山に恵まれた自然豊かな場所でもあります。藤枝市というと、名前の通り「藤」が市の花に指定されていて、「蓮華寺池公園」や「白藤の滝」など、花を意識させてくれるスポットが存在。国指定史跡「志太郡衙跡」「東海道宇津ノ谷峠越」などもあり、文化的な場所の見どころも。「サッカー」や「朝ラーメン」の地としても知られ、ユニークな魅力のあるまちです。
なぜサッカーがそんなに強い? 藤枝サッカーの歴史
藤枝市といえば「サッカーのまち」としても知られ、高校サッカー強豪校を抱えるほか、元サッカー日本代表の中山雅史選手や長谷部誠選手などを輩出したサッカー王国静岡県の中でも特にサッカーが強いまちです。
その理由はさかのぼること1924年、現在のサッカー強豪校である藤枝東高校の校長だった錦織兵三郎氏が初めてサッカーを体育の運動競技として取り入れたのがきっかけで、以来「校技」として奨励されたサッカーに生徒たちも夢中になり、やがて藤枝東高校が高校サッカーの名門校として知られるようになったそうです。
そうした歴史もあり、藤枝市ではまちづくりの一環で市をサッカーのまちとして推進していこうとさまざまなサッカーイベントを開催しています。
UR都市機構(以下UR)は令和2年度から藤枝総合運動公園改修事業を受託していて、バックスタンドに屋根付き観客席が設置され、今年の1月27日にお披露目になりました。
古くから残る商店街と、新しく生まれ変わる藤枝駅周辺エリア
JR藤枝駅の南側には近年「オーレ藤枝」や「Bivi藤枝」などの大型商業施設が建設され、再開発が進み、藤枝駅周辺では、今後ますます便利で住みやすいまちになるようにソフトとハード両面でのまちづくりが行われています。URではJR藤枝駅北側の「藤枝駅前一丁目8街区第一種市街地再開発事業」のプロジェクトに参画し、再開発事業の立上げ支援と推進を行いました。
一方で、静岡県藤枝市JR藤枝駅の北口から広がる「れんが道商店街」もあり、エモさのある街並みも見ることができます。「れんが道商店街」が誕生したのは、JR藤枝駅が開通した明治22年のこと。その後、昭和50年から55年にかけて商店街近代化事業が実施されたといいます。
それでは、藤枝駅周辺のおすすめのお店をご紹介していきましょう。
近年、藤枝のご当地グルメとして話題を呼んでいるのが「朝ラーメン」。静岡県内でも有数の茶産地である藤枝では、古くからお茶取引などで早朝から仕事をする人が多く、仕事を終え、仕事帰りの腹ごしらえをしようと人気ラーメン店に並ぶ茶業関係者たちを見かねた店主が営業時間を早めて早朝からラーメンを提供するようになったのが起源といわれています。
今では他県でも「朝ラーメン」が人気になりつつありますが、ここ藤枝の朝ラーメンは何と言っても「温」「冷」両方のラーメンをセットで食べること 。つるりとした麺と、魚介系醤油ベースの比較的あっさりしたスープで朝から食べても胃もたれしないと評判になり、現在藤枝市内には約20店舗もの朝ラーメンを提供するお店があるそうです。
JR藤枝駅北口から徒歩2分ほどの場所に今年4月にオープンしたばかりの「まる藤ラーメン」。藤枝市にあるハンバーグ専門店「小川商店」の小川シェフが開発したというラーメンは、他の藤枝ラーメンとは一風変わったこだわりの朝ラーメン。一番人気は、それぞれハーフサイズのラーメンがセットになった「朝ラーメンセット」です。
温かいラーメンは、鶏だしと4種類の醤油をブレンドしたかえしを合わせたスープに、じっくりと低温調理したフレンチ仕込みのレアチャーシューが効いた一杯。鶏のうま味と醤油本来の味わいが楽しめるラーメンです。一方、冷たいラーメンは、鶏だしに塩ベースで貝のうま味を凝縮したかえしを合わせた冷製スープに、低温調理の鶏チャーシューとレモンや刻んだイタリアンパセリ、レッドオニオンなどをトッピングしたおしゃれな一杯。オリーブオイルで仕上げ、冷製スープパスタを思わせる斬新なラーメンです。
オープンしてまだ間もないですが、連日行列ができ、午前中にはラーメンが完売してしまうほど。「藤枝駅周辺はお昼の人通りが少ない傾向があったんですが、ここに店を構えてから住民の方たちに以前よりこの通りに少し活気が生まれたと言ってもらえたとき、ここに出店した意義があったなと思いました」と話すのは、フジエダ勝手にプロデュース株式会社、まる藤ラーメンのディレクターを務める黒田正信さん。
「2週間に1回、藤枝MYFC(サッカーチーム)のホーム戦が藤枝市内であるんですが、その時に対戦相手チームのサポーターがお店に食べに来てくれることもあるんです。日本全国から来てくれるので、藤枝の朝ラーメンが全国に知られる、いいきっかけにもなるので嬉しいですね」
藤枝市内にはたくさんの朝ラーメン店があるものの、いずれも徒歩では難しい距離にあるため、まる藤ラーメンのある場所は駅近で、他県からの人も訪れやすいのも魅力です。
「まちが活性化するためには店一軒だけでは実現しないものなので、藤枝駅周辺にたくさんのおもしろいお店が集まってくると、これからもっと賑わってくんじゃないかと思いますし、わたしたちもこの地で頑張っていきたいと思っています」と意気込みを語ってくれました。
女性にも食べやすいサイズと見た目で連日幅広い年代の客層で賑わうまる藤ラーメン。創意工夫に富んだ話題の朝ラーメンはぜひおすすめしたいご当地グルメです。
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一日をゴキゲンにしてくれる種類豊富なサンドイッチ「LifeislikeaSANDWICH.」
藤の花をかたどった街灯が並び、昔ながらの商店が軒を連ねるJR藤枝駅北口のレンガ道商店街。その中心から少し離れた一角にあるサンドイッチ専門店 「LifeislikeaSANDWICH.」は、2023年11月にオープンしたばかりのお店です。
店内に入ると、ショーケースの中にはごろんと大きなハンバーグとトマトやアボカドなどを一緒にサンドしたボリューム満点の「ハンバーグサンド」や、たっぷりのクリームとチョコレートクッキーをサンドしたスイーツのような「オレオサンド」に、しらすと梅しそをご飯でサンドした「しらすwithうめしそライスサンド」など、種類豊富なサンドイッチがずらり。オープンしてすぐに売り切れてしまうものも多く、人気の高さがうかがえます。
もともとこの場所は介護施設などを運営する会社の事務所だそうですが、商店街もあり、何か他にもお客様とコミュニケーションの取れる新規事業をやってみたいということで、事務所の一角にサンドイッチ店を構える形でオープン。斬新でおいしそうなたくさんのサンドイッチのほとんどは、オーナーのアイデアだそう。
店内のポップな壁紙やサンドに使うカラフルなパン、そしてサンドイッチをくるんだラッピングなどがかわいいと評判になり、商店街を通る地元の人たちに加え、インスタを見て、わざわざ遠くから足を運んで来てくれる人もいるといいます。
「お店のサンドイッチを見て、かわいい! と楽しそうに選ぶお客さんの姿を目にすると、ここでお店をオープンしてよかったなと思います」と、にこやかに語ってくれたのはスタッフの加藤妃湖さん。
「晴れていればちらりと富士山も見えますし、車で20分くらい走れば海も見えるので、藤枝はいいところですよ。毎年4月末から5月上旬にかけて『藤まつり』があるんですが、その時はまちに藤が咲いてきれいなんです。ここでサンドイッチを買って藤を見に行ってもいいですしね」と教えてくれました。
次から次へと、新しいサンドイッチメニューが登場するのもこのお店の魅力。ボリューム満点&キュートでおいしいサンドイッチがお腹も心も満たしてくれるはずです。
創業62年。藤枝のまちを見守り続けるエモ喫茶「サモワール」
JR藤枝駅北口を出てすぐ、レトロなインテリアオブジェと食品サンプルが純喫茶ならではのエモさを醸す老舗喫茶店「サモワール」。
創業当初は同じ藤枝市の別の場所でオープンしたそうですが、昭和48年の都市計画のタイミングでこの場所に移転。近年の新型コロナによる影響も乗り越え、親子二代にわたって続くこのお店は、今年で創業62年。どこか懐かしさと温かみを感じる昔のポスターや人形、中には昔使われていたという本物の信号機などのオブジェは、先代店主が集めて飾っていたというもので、不思議とインテリアにマッチし、店内に落ち着きすら与えてくれる存在に。
お店の人気メニューは、純喫茶の王道メニューともいえる昔ながらのナポリタンやハンバーグ。ケチャップとバターが効いたパスタにピーマンやベーコンの旨味が合わさり、フォークが止まらないおいしさのナポリタン。食後は、たっぷりとアイスクリームが載ったクリームソーダもおすすめ。さっぱりしたソーダの味とまろやかなアイスのコンビネーションが抜群で、今も昔も不動の人気を誇る鉄板メニューです。
「昔の喫茶店ブームの時は、娯楽としてみんなが喫茶店に行くような時代だったんです。今もリバイバルで純喫茶が流行っているみたいですが、学生さんもよく来てくれています」と話すのは、生まれも育ちも藤枝市という二代目店主の合月映良さん。
長く地元でお店をやっていると素敵なご縁もあるようで、何世代にもわたってお店に足を運んでくれるお客さんもいるのだとか。
「自分が20代の頃一緒に遊んでいた友人たちがいたんですが、みんな仕事や育児で一時疎遠になっていたんです。それから20年以上経った頃、誰かに似ている子がいるなと思って話してみると、疎遠になっていた友人の子どもだったんですよね。お互いびっくりでしたが、それがきっかけでまた友人と再会するきっかけができたりしてね。そうやって、世代を巡りながら人のご縁に恵まれるのはうれしいことだなと思っています。ですので、お店は自分が続けられる限り、続けていきたいと思っています」と、優しい笑顔が印象的な合月さん。その温かいお人柄にも、何世代にもわたってお店が愛される理由があります。
日差しがたっぷりと差し込む明るい店内は、とても心地がいい雰囲気。長く愛される老舗喫茶でくつろぎの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
今後、駅前の再開発が進み、より注目度が高まる藤枝のまち。いつもよりちょっと早起きして朝ラーメンを堪能し、サンドイッチを持って近隣の公園やバスに乗って蓮華寺池公園を散策。そして帰りの電車の前に喫茶店でちょっと休憩、なんていう休日の過ごし方もいいかもしれません。これからピクニックが楽しくなるシーズン。ぜひ藤枝のまちを楽しんでみてください。