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「第2期しぶやをつくるゼミ」2期生の最終発表会をレポート(第2回・後編):「#Interviews まちづくりってどんな人が携わる?」

「渋谷を訪れる人や渋谷に暮らしている人が、このまちを世界一だと思ってもらうこと」を目標に活動している、一般社団法人「渋谷駅前エリアマネジメント」現場で日々働くエリアマネジメント担当者3名による鼎談をお届けした前編に続き、後編では「NPO法人シブヤ大学」と主催している「第2期しぶやをつくるゼミ」の最終発表会をご紹介します。

※(2021年9月にスタートした1期では、一般公募により25名のゼミ生が参加し4グループに分かれて活動した「しぶやをつくるゼミ」。2022年2月に行われた発表会の様子はNPO法人シブヤ大学の公式サイトレポートに掲載されています。)

「しぶやをつくるゼミ」とは、先出の「渋谷駅前エリアマネジメント」がNPO法人「シブヤ大学」と一緒に取り組み、一般市民の方がグループに分かれて「渋谷のまちでやってみたいこと」を、ざっくばらんに、ときに真剣に、たのしく考え、対話する場。一般公募で選ばれたゼミ生が、渋谷という“まち”をフィールドに、楽しく真剣に議論しながらアイデアを企画します。

2023年1月に開講した第2期は、NPO法人シブヤ大学の深澤まどかさんと渋谷駅前エリアマネジメントの荻野瑛子(UR都市機構)を先生に、角揚一郎さん(東急株式会社)と横山大輔さん(東急不動産株式会社)が日々のエリマネ業務の悩みごとを相談するオリエンテーションから始まりました。1期同様に公募で選ばれたゼミ生は16名で、4人4グループに分かれて「渋谷でやってみたいこと」をテーマに、ゼミ内外でのグループワークや第1期生が企画をした、渋谷駅周辺を回遊するツアーなどを進めてきました。

3月9日(木)には、各グループによる共有会が行われました。“個々の渋谷への想いを大事にするゼミ”を標榜した最終回は、およそ2カ月間で“新しい渋谷像”を模索し続けた仲間が集うアットホームな空間に。ここでは、4グループ「みんなのしぶや」「わたしにやさしいしぶや」「ギャングシTEA」「しぶや愛つよめ隊」のレポートをお届けします。

アイデアに溢れた2期生の最終発表会をレポート

グループ【1】「みんなのしぶや」中高生が自由に交流できるスペースを開設
活動を通じて、「みんな」(来街者だけでなく区民、年代を問わず多様な人たち)を対象とした
企画を考えていきたいという「みんなのしぶや」

誰にとっても親しみやすいまちをイメージしたというチーム「みんなのしぶや」。メンバーの中には、中学高校を海外で過ごしたことで自由に夢を追う場が学校以外であるといいと思っていたメンバーや、中高生のいる教育現場で指導者として働いている親世代のメンバーも。プレゼンテーションで提案したのは、若者限定交流スペース“みんなのしぶや”の開設です。
 
実体験の場が減ったスマホ世代に、リアルな反応や距離感を知る場を提供したい、という思いで生まれたプランとなっています。学校生活や部活動、受験勉強など色々なことを頑張っている中高生に、普段の生活とは別のところで、”夢”や“好き”と思える何かに出会えるまち=多様な他者と交流できる渋谷を作り出したい、というメッセージを伝えてくれました。

学生が参加しやすい春・夏休みに、渋谷駅東口地下広場にあるUPLIGHT COFFEEを会場に、“未来創造ワークショップ”や“夢発見プロジェクト”といったイベントを行うというアイデアを発表したチーム「みんなのしぶや」は、将来的な構想を含めて多角的に展開したのも印象的でした。

グループ【2】「わたしにやさしいしぶや」街の掲示板をみんなでシェア
「わたし」とは何か、「わたしにとって優しいシブヤ」とは何かをゼミの中で
考えていきたいという「わたしにやさしいしぶや」

「わたしにやさしいしぶや」は、あらゆる世代にアプローチする施策を発表。大人だけでなく、子供や高齢者にも優しいまちを目指そうと、アナログとデジタルの両方を使った”SHIBUYA E BOAD”の設置を呼びかけました。
 
これは、“みんなが見つけたいい(E)もの”をシェアする電子ボードを、まちの掲示板として活用するというアイデアです。朝・昼・夜・深夜と時間帯別に出す情報を変えることで、その時その場で知りたいことが見つかる場所を提供していくイメージを打ち出しました。
 
設置場所は渋谷駅東口地下に林立しているデジタルサイネージや街を彩る大型ビジョンの他、まちかどにある町内向けの掲示板を使って謎解きゲームをしてみるのも面白いのでは、といったアイデアに会場が沸く場面も見られました。

グループ【3】「ギャングシTEA」ハチ公やモヤイ像、“あいりっすん”を有効活用
地方出身者にとっての憧れの「渋谷」のイメージを守りたい「ギャングシTEA」

「渋谷は憧れだったけど、実際行くとがっかりすることも多い」と語ったのは、大阪の高槻市や東京の足立区、お茶どころの名古屋や静岡出身のメンバーが集まった「ギャングシTEA」です。駅前でも安心して待ち合わせしたくなる、初心者に優しい渋谷を目指すプロジェクトを提案しました。
 
“ハチ公を細分化する作戦”では、ハチ公像の前を碁盤目状に区画をナンバリングし、待ち合わせ場所を個別に確保する、という斬新な発想を披露しました。さらに“新しい待ち合わせ場所の創出”を提案し、“推し活”の聖地を渋谷に作るプランも展開。ハチ公以外にモヤイ像などのランドマークや渋谷区PRキャラクター“あいりっすん”の認知度UPや、クラウドファンディングでの広告運用などによる東口地下広場の活用など、ニーズの高そうな具体案にエリアマネジメント担当者の面々も興味津々。実現化に向けてどうするべきか、質疑応答コーナーも大いに盛り上がりました。


グループ【4】「しぶや愛つよめ隊」身近なカリスマに学ぶ人生が楽しくなる一般講座
「しぶやへの愛」が強い人たちが集まる「しぶや愛つよめ隊」

最後を飾ったのはゼミでの活動以外にも、勤務地や遊び場が渋谷にあるメンバーの「しぶや愛つよめ隊」です。渋谷スクランブルスクエアなどのランドマークと、渋谷で個性を発揮する“カリスマ”に注目し、“SHIBUYA CHARISMA UNIVERSITY”というプロジェクトを発表しました。
 
これは、渋谷駅周辺にあるオフィスビルの空きスペースをオフィスの営業時間外に利用し、“SHIBUYA CHARISMA UNIVERSITY”の講師に身近なカリスマを迎えるという仕組みです。すり鉢状の地形ゆえ、柔らかくしなやかな構造をもつ渋谷という地で、生活や人生を楽しく豊かにするヒントやアイデアを共有できたら、という思いが込められています。
 
講座の一例としては、“DJポリスに学ぶラポール構築術”や、“ホテルの清掃スタッフが伝授するベッドメイキングと水回りの掃除法”“109の販売スタッフによるメンズの身だしなみ、ネイル&ビジネスマン向けのメイク講座”など、渋谷だからこそ実現できそうなラインナップを提案しました。

第2期ゼミの提案を新たなパワーに変えることがエリアマネジメントの使命

シブヤ大学では組織づくりやプロジェクトコーディネートを中心に担っている深澤まどかさん

ゼミで荻野と共に先生を務めた、シブヤ大学の深澤まどかさんは「まちの解像度を上げられる企画が多数ありました。ぜひシブヤ大学で一緒にやってみたいです!」と語りながら、ゼミ生に向けてこんなメッセージを伝えました。
 
「渋谷ほど、来る前の段階でイメージが強く打ち出されているまちは多くないと思います。世界中の人たちが持っているイメージは一辺倒かもしれませんが、そんなイメージを皆さんがそれぞれに噛み砕いて考えられたプロセスが伝わってきました。“若者が心地いい渋谷”、”渋谷だから許してもらえる”、”地方出身にも優しい”など、すぐ使いたいキャッチフレーズがたくさんあったのも印象的です。みなさんが自分の言葉に落としていくことはとても意味があり、素敵だと思いました。このゼミが今後も続いて卒業生がたくさん増えれば、渋谷というまちが変えられるパワーになるのでは、と妄想しています」
 
また、発表を聞いたエリアマネジメント担当者からは「班ごとに個性があったのがシブヤらしい。遊び心で渋谷を動かせ、が体現された場でした」「人が中心の街ということを再認識しました」「個性が組み合わされることで新しいことが生まれる、いろんな化学反応が起こる場を提供することが大切だと実感しました」といった声が聞かれました。
 
今後のエリアマネジメントの活動に反映させていきたい、と意気込む荻野はゼミをこう振り返ります。

「渋谷」に対する愛をまちづくりへと繋げる場となるゼミ

「1期も2期もバックグラウンドの異なる10代〜60代の幅広い方に渋谷への色んな想いをもって、ゼミに参加いただきました。なかには、当初は“渋谷が苦手”、”実は渋谷がよくわからない”などネガティブな想いを持っている方もいらっしゃいましたが、他のゼミ生との話し合いを重ねることで、“渋谷のまちにもっと関わりたい!” という声を聞くことができました。まさに、渋谷が集める多様な人々が交じり合うことで、ゼミ生の中での渋谷の解像度が上がり、新しい出会いがあったのだと思っています。まちづくりは地域の皆さん、行政、民間事業者さんなど多様な立場の方が想いを持ち寄り、話し合いを重ねて、実現していくと考えます。みなさんに出していただいたアイデアは、今後のエリアマネジメントの活動にしっかりと生かしていきます」

2023年は「渋谷駅前エリアマネジメント10周年を迎える節目になります。5月30日(火)には、渋谷駅東口地下広場でイベントを開催予定。「第3期しぶやをつくるゼミ」は9月に開講を予定しています。

今回のレポートを読んで、渋谷のまちづくりに興味をもった方のご応募をお待ちしています!

写真:梅沢香織
編集:福津くるみ

前編はこちら▼

第2期しぶやをつくるゼミの活動の様子はこちら(渋谷駅前エリアマネジメント公式Instagram)▼

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