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フォトコンテスト審査会レポート&受賞作発表 #from広報

 こんにちは!UR広報課です。
 3月から5月まで作品応募を受け付けていたUR都市機構フォトコンテスト、ついに受賞作品が決定しました!
 今回は、フォトコンの審査会は一体どんな様子で行われているのか?実際に8月初旬に実施された審査会の模様をレポートしつつ、各部門の大賞と優秀賞の紹介をしたいと思います。


応募状況について

 審査会冒頭、広報課から今回のフォトコンの応募状況について説明を行いました。今年は3月22日~5月31日の期間で、団地部門・復興部門を募集しました。応募にあたっては、作品に込めたメッセージを付してもらっています。
 応募作品総数は1,003点、うち団地部門は519点、復興部門は484点の応募があり、応募者の総数は349人、複数点数の作品応募がトレンドであることと、今年は復興部門の作品点数が昨年と比べ増加しているという傾向がありました。

当日審査資料より抜粋。

候補作品の選定

 広報課からの説明のあと、審査員の方々から自己紹介がありました。

池邉さん

池邊 このみさん
私がUR職員として在籍していた時代に、団地に住まわれている方や、近くを歩いている方などに誇りをもってもらいたいという思いから、メッセージを付して作品を応募してもらう形でフォトコンを実施しました。 地域の方のアイデンティティや誇りにつながる動きだと思いますので、今なお継続していることはうれしい限りです。

大西さん

大西 みつぐさん
このフォトコンの審査には数えきれないほど関わってきました。皆さんとともに毎年顔を合わせて写真を選んでいますが、継続は力なりと感じています。 カメラやSNSの発達もあり、誰でも写真が撮れる時代ですが、こういう場に応募してきている方々の並々ならぬ情熱に支えられています。応募している方の気持ちを大事に汲み取りたいと思います。

みぞみぞさん

みぞみぞさん
ポートレートや風景を撮影して、展覧会なども開いています。 SNSを中心に活動しているのでインスタの応募作品を中心に新たな視点から写真を見ることができれば幸いです。 私自身も今回団地の写真を撮影しましたが、被写体として面白くするのがなかなか難しいと感じました。 住んでいる方はそこに住まわれているからこその文脈を付けられるので面白い視点が見られるのではないかと思っています。

西田さん

西田 司さん
震災の前に戻るだけではなく、石巻をバージョンアップするということを掲げ、一般社団法人ISHINOMAKI2.0の理事を務め、石巻に関わっています。団地は専門という訳ではないですが、建築家の視点から写真を拝見したいと思っています。

 自己紹介も終わり、審査員がそれぞれ受賞の候補作をピックアップする時間が始まります。
 作品すべてにコメントが付いているので、その一つ一つを読みながら写真を選ぶのは大変な作業ですが、丁寧にメモを取りながら時間をかけて作品を選びます。 

 時間にして一時間、静かながら熱量の感じられる時が過ぎていきます。
 選定中、今回が初めての審査のみぞみぞさんから「文言の力がすごい。特に東北はあまり訪れたことがないので知らないことがコメントで書かれていると実感が湧きますね。」という言葉が漏れていました。
 また、池邊さんからは「年ごとのメッセージの変遷から復興の進みを感じますね。」という言葉がありました。

メモを取りながら作品を選定していきます。

団地部門 審査

 審査は審査員の話し合いで行われます。話し合いの前に、各々がどのような基準で作品を選定したかを説明しました。
 大西さんからは「今年は選定に時間がかかりました。個人的にはこれまでで一番人の存在が濃厚で、良いと思いました。団地は人が暮らすからこそ団地。今回は人の存在が気になるものを選びました。」、西田さんからは「団地はストーリー感で選びました。これまでにないようなセンスのものが見られました。」という話がありました。
 議論の流れも、写真の出来栄えはもちろん、そこに込められたメッセージやストーリーについて審査員の方々で活発に意見が交わされます。
 特に、ここ3年はコロナ禍もあり、人が集まる光景の写真が減っていたのですが、今年は人が集まり、団地での人々の営みが感じられる作品が多く届き、受賞検討の俎上にもそのような写真が多く並ぶのが目立ちました。
 議論にも一時間を費やし、最終的には、ややアーティスティックな写真でこれまでにない新機軸でありながら、メッセージに込められたストーリーを明るく表現されているということが高評価につながり、大賞が決定しました。

活発な議論が交わされます。

復興部門 審査

 続いて、復興部門の審査が始まりました。団地部門と異なり、復興部門の作品は大賞が早々に決定しました。各審査員からは「風景として非常に適切な構図。平穏な美しい風景を愛でていく余裕が少しずつ戻ってきているということが感じられる。(大西さん)」
「アングルが面白い。日常のサーフィンや犬の散歩の風景が回復してきている、海岸の復旧工事が完了したというメッセージも良い。(西田さん)」「写真としてのクオリティが高い。構図、光の捉え方、波のタイミングが良い。(みぞみぞさん)」という写真の技術もメッセージ性も秀逸というコメントがありました。
 一方、優秀賞については池邊さんから「年月の経過から非常に明るい作品が増えましたが、敢えてそういったものだけではなく、震災復興の中でメッセージとして残すべきものを選定したい、復興を忘れてほしくないという思いが強いです。」という提起があり、今なお復興の歩みが始まったばかりの福島県浜通りの写真が選定されました。

 こうして、昼過ぎから夕方まで議論を重ね、それぞれの賞を決定しました。大賞・優秀賞の各作品には、それぞれ審査員の方から講評を寄せていただきました。

 ここからは、各部門の大賞・優秀賞の作品を紹介したいと思います!

団地部門 大賞・優秀賞

  

大賞
タイトル:春の日差し(大谷田一丁目団地)
メッセージ:いつもみんなが遊ぶ中庭の原っぱ。今日もいい日差しです。大好きなお菓子の生地から服を手作りしておめかしして。結婚式を挙げない私たちにとってこれが結婚写真です。
審査員講評:いつの時代であっても、自宅や近隣で記念写真を写すという行いは続いています。若いお二人の一見奇妙なポーズは、これから新しい暮らしが始まっていく喜びから生まれていそうです。「狭いながらも楽しい我が家」はすでに昔の話。毎日をゆったりとクリエイティブに過ごしていこう!という若い世代の率直な気持ちが、明るくコミカルに表現された作品です。(大西みつぐ)

  

優秀賞
タイトル:今日からよろしくお願いします!(藤山台団地)
メッセージ:UR団地へ引っ越して初日、空っぽの戸棚に何を入れようかわくわくしながら撮った1枚です。キッチンはお気に入りスポットのひとつで、壁のタイルや収納棚の質感が少しレトロで好きです。
審査員講評:少し前までの団地のイメージとして、古い・汚いというものがありましたが、昨今の昭和レトロブームもあって、若い世代からはネガティブな印象が払拭されたように思います。撮影者の方にとって、団地に住むというのはわくわくする素敵な事なんだというのが伝わる一枚でした。(みぞみぞ)

  

優秀賞
タイトル:みんなで雨宿り(神代団地)
メッセージ:子どもたちが帰ってこないので、心配して下に降りてみたらみんなで雨宿りしていました。団地の子どもたちはとっても仲良し。「そろそろご飯の時間だよ〜」と声をかけたら、みんなお家に帰っていきました。
審査員講評:雨が降ってなかなか帰宅しない子供を心配したら、団地の入口でかわいい女子会が行われていたという微笑ましい作品です。団地ならではの空間と、コロナが終ってきて、集まってマスク無しで話せるという開放された雰囲気も伝わってくる点が評価されました。The団地ともいうべき一品です。(池邊このみ)

  

優秀賞
タイトル:心地よい寒さと映え装置(神代団地)
メッセージ:大好きな神代団地でクリスマスマーケットが開催されるということで、子供を連れて行ってきました。美味しいソーセージを食べてると大量のシャボン玉を発生させるオルゴール(?)が。あっという間に吸い寄せられていきました。こういう笑顔が団地には溢れてますよね。
審査員講評:団地のハレの日の一枚。クリスマスマーケットのシャボン玉の中を歩く子どもの笑顔に対して、背景の団地の商店街のレトロな印象が良いコントラストになっている。団地が子ども達の記憶の風景になっている感じが伝わってきて、団地の祝祭的な使われ方を写真が切りとっている価値を評価したい。(西田司)

復興部門 大賞・優秀賞


  

大賞
タイトル:暮れないの日常(福島県いわき市)
メッセージ:この海岸も被害に遭い復旧工事が終わり綺麗に。散歩・サーファー・釣り等、人々が楽しむ海岸に戻りました。日暮れ前の散歩する姿、震災前の当たり前の風景に嬉しくもあり、感慨深い気持ちになりました。
審査員講評:撮影したシーン・構図・色の表現など、写真の構成要素がいずれも高クオリティな素晴らしい写真です。特に夕日を受けながら進む波の表現に非常に高い技術を感じます。被災地でもまたこのような景色が見られるという感慨深さが審査員にも伝わってきました。(みぞみぞ)

  

優秀賞
タイトル:ハレの日(岩手県一関市)
メッセージ:孫が小学校入学時にランドセルをばあちゃんからプレゼントされた。無事6年卒業しました。
審査員講評:震災の年には2歳だった女の子も中学入学を迎えました。ランドセルは小学校入学時の祖母からの贈物。素朴で明るい情景に復興の「時間」を物語る材料がたくさん盛り込まれています。適切なカメラアングルとシャッターチャンスできれいにまとめられました。一枚の写真に表現される私たちの暮しのリズムは、かくも美しい!(大西みつぐ)

  

優秀賞
タイトル:Go Straight(宮城県石巻市)
メッセージ:東日本大震災からの復興のシンボルとして再建された石巻魚市場。朝凪の頃、ひんやりと静謐な海とその奥で水平線まで続く世界最長の魚市場はまるで無秩序な自然と共にこの地で生きてきた人々の息づかいが聞こえてくるようだった。
審査員講評:復興のシンボルであり、世界最長の魚市場である石巻魚市場の巨大さ(長さ)を水面ごしの美しい横長の奥行きで表現した写真。消え入りそうなくらい長い魚市場の存在感が雑多でにぎにぎしい市場ではなく、静かなトーンで海と空のあいだに佇むように切りとられることで、独特な存在感をもった写真になっており素晴らしい。建築の新しい一面を見せられた印象であった。(西田司)

  

優秀賞
タイトル:伝え続けるとみおか(福島県双葉郡富岡町)
メッセージ:双葉郡富岡町の子安橋から見る2023年の初日の出を拝む母の背中。まだまだ復興途中の町ですが、止まっていた時間は動き出し町を包み込む太陽を、笑顔で眩しがる顔も増えました!富岡町で311の語り人活動をしている母を引き続き応援していきます!
審査員講評:とみおかの語り人活動をしているというお母様を近景にいれた海の美しい初日の出の風景を捉えた富岡への想いの詰まった意味深い作品です。初日の出を眺める母娘が富岡の昔とこれからに願いを込めている様子が感じられる点を高く評価しました。伝え続けるとみおかを継承して下さい。(池邊このみ)

おわりに

 今年もフォトコンテストが幕を閉じました。毎年、今年はどれくらいの作品が集まるだろうかとドキドキしながらスタートしますが、今年も多くの作品をご応募いただきました。改めて、応募いただいた皆様の情熱に大変感謝しております。本当にありがとうございます。
 フォトコンテスト開始時にも記しましたが、私自身、応募作品のメッセージを一つ一つ読んでいますが、多くの方にUR賃貸住宅に思いをもって暮らしていただいていることに胸が熱くなる思いです。また、東北では前を向いて力強い歩みを進めている方がこれだけおられて、おこがましいですがこのコンテストを通じて少しでも多くの方に東北の「今」を伝えていくことができればと思っています。
 今年の写真は私がフォトコンテストに携わって以来、人が集まる姿が最も多く写されていたと思います。長かったコロナ禍にようやく光が差し込む、そんな兆しが写真を通じて見られたような気がします。
 人が集まり、暮らす。社会課題に向き合いながらこの国の暮らしに貢献していく組織の一員として、このような写真が多く集まったことがとてもうれしいです。
 審査員の方々とも、URのフォトコンテストはメッセージを込めてもらっていることで意味のあるものになっているよね、という話を審査会当日にしていました。
 撮り手が発する真剣なメッセージに、受け手も真剣に向き合っていく、このコンテストを今後も長く続けていきたいと思います。
 来年も開催したいと思っていますので、今からぜひ素敵な場面を切り取ってお待ちください!

 他の入賞作品含め、詳細な結果発表はこちらから!

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