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URに根付くまちづくりのスピリット。それは“互いを助けあう”思いやりの心:(第2回)「#まちづくりの達人」
UR都市機構(以下UR)は、昭和30年からさまざまなステークホルダーとともに、時代ごとの変化や多様な社会要請に応え、安全で安心、快適なまちづくり、そしてくらしづくりに取り組んできました。これからも「人が輝く“まち”」に貢献するために、令和4年からは「社会課題を、超えていく。」というメッセージを掲げています。
この「社会課題を、超えていく。」ために、URにはさまざまな分野で活躍する職員がいます。全3回の連載でお届けする「#まちづくりの達人」では、URを支える彼らのまちづくりに対する情熱と将来への展望を紐解きます。
第2回に登場するのは、平成15年にURに入社し、現在は、東日本賃貸住宅本部 住宅経営部 経営管理課で、首都圏の住宅経営部門の経営管理のとりまとめに従事する大塚 五三雄です。
プロフィール
大塚 五三雄
東京都出身、平成15年に入社。新築賃貸住宅の入居者募集業務を経験後、ストック活用、営業、財務などの部署を経て、現在は東日本賃貸住宅本部にて経営管理に関する業務に従事。
子どものころから大のジャイアンツファン。現在は同じく野球好きの息子さんとともにジャイアンツの試合を観戦するのが趣味。さまざまな風景が見られる団地が好きで、特にお気に入りなのは常盤平団地(千葉県)、こま川団地(埼玉県)、館ヶ丘団地(東京都)。
地元のまちの再開発を目にしたことも入社のきっかけに
今から22年前、当時、就職氷河期真っ只中での就職活動だった大塚。数多くの面接をこなし、重苦しい空気が漂う企業もある中、対応する職員の雰囲気から、直観的に“ここにしよう”と思ったのがURだったといいます。
「受け入れる雰囲気がよく、丁寧な対応をするURに対してホスピタリティの高い会社だと感じ、漠然とですがこういう会社が長期的に生き残る会社だろうなと思いました。また、入社する前に自分の住んでいるまちの近くでURの再開発が行われていて、まちが新しく生まれ変わるのを目の当たりにし、まちづくりに関わってみたいと感じたのも志望した理由の一つでした」
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ジョブローテーションが多く、この20年間に10回以上の異動を経験。しかし、どこに異動してもお互いに助け合いながら仕事を進めていく社内風土のおかげで、異動による苦労はほとんど感じなかったといいます。
「採用面接のときに感じた、“ここにしよう”という直観は間違っていなかったと思っています。ジョブローテーションが多く、互いに助け合いながら業務を効率的・効果的に進める社風が私には合っていました。新卒で入社後、最初の仕事として川崎の団地(アーベインビオ川崎)で新築賃貸住宅の入居者募集のプロジェクトに携わったとき、入社したてというのもあってプレッシャ-を感じていたのですが、周りの先輩たちに助けていただいたことを今でも覚えています。また、優秀で柔軟な思考を持つ職員が多く、業務は効率的に進められるため、仕事外の時間や有給休暇も確保しやすく、オンオフともにスケジュールを立てやすいこともあって、前向きに仕事を続けることができていると感じています」
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時代とともに大きな組織改革も。数々の部署を経験しつつも楽しんでやれるのは“人”という財産のおかげ
戦後の住宅不足解消のため発足したUR(昭和30年発足当初は日本住宅公団)。常に変化する時代のニーズに応えるべく事業展開してきたURは、大塚が入社した翌年である平成16年に現在の独立行政法人都市再生機構へ、大きな組織改革が行われることに。
「この20年は社会的にも経済的にも大きく変わった時代でもあり、それに合わせてURも大きく変化をした時期でもありました。団地に関しては言えば、人口減少社会に応じて、新規の建設から既存住宅のリノベーションが主流となっていきました。振り返ると、大きな変化に対応しながらも、組織としても事業としても安定化することができたのは、社員一人一人の熱量だけでなく、誠実で助け合う風土があるからだと思います」
「そのように感じるのは異動が多く、さまざまな部署を見てきたからこそ。加えて、新卒の人も中途の人も合わせて離職率が低く、長く勤めている人が多い。だからこそ、事業としてきちんと結果も出せる。入社以来、それをずっと感じられているのも幸せなことだと思っています」
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かけがえのないものになっているという
2〜3年ごとに部署異動があったという大塚。新卒で配属になった新築賃貸住宅の入居者募集の業務からストック活用計画、営業、財務など幅広い業務を経験したのち、現在は東日本賃貸住宅本部 住宅経営部 経営管理課に所属。UR賃貸住宅事業の経営を取りまとめる業務に従事しています。
「勤続して20年以上が経ちますが、主には営業と経営最適化の部署が多かったです。現在はURの経営の柱でもある賃貸住宅事業の経営の最適化を図るため、どのくらいコストがかかり、そのためにはどういう方法でどのくらいの利益を作るかという内容を考える部署にいます。昨今の物価高騰や人口減少の問題など社会的な要因も加味しながら、賃貸住宅事業を継続していくにはどうしたらいいかという大きな視点で考える部署でもあるので、社内のコンサル的な要素もある業務です」
少子高齢化と外国人入居者の増加にともない団地のあり方も変化
団地は戦後の住宅不足解消の目的から建設が始まり、社会が安定していくにつれ新規の建設も減少。少子高齢化が進み、日本にやってくる外国人労働者も増加しています。それにともない、団地のあり方も変化しているといいます。
「賃貸住宅は、流動性が高い住まいなので、社会の変化に影響を受けやすいです。それは、これまでの業務を通じて実際に肌で感じてきたことでもあります。最近では『コロナ後』の住宅マーケットが特徴的です。首都圏は人・資金が集中することによる『売り手市場』の傾向にあり、分譲住宅の価格高騰や、ファミリー向け賃貸住宅を中心とした賃料上昇の影響を受けて、団地によっては、お住いの確保について社会的に配慮が必要な方、具体的にはご高齢者と外国人の入居希望者が増えています。今後、この流れはより加速していくと思います。URの経営としてどうしたら安定的に、賃貸住宅を必要とする人に住まいを供給し続けることができるのか常に考え、貢献していきたいと思っています」
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UR賃貸住宅は入居における基準を明確に開示。それを満たせば誰でも入居することができるため、住宅セーフティーネットとしての役割も果たしています。
「賃貸住宅の申し込み基準は開示されているのが当たり前、と思われるかもしれませんが、賃貸住宅マーケットにおいては入居後のあらゆるリスクを考慮し、申込基準があいまいになっているケースが少なくありません。しかし、URの場合は収入など入居基準を明確にしており、ケースバイケースでお客様のお申込みを断ることはありません」
「また、申込基準だけでなく、退去の方法や原状回復など住宅や団地の管理体制に関するプロセスやルールについても可能な限り開示し、さまざまな人に対応するためにも入居から退去までのプロセスやルールを明確にし、何においてもクリアに対応しています。賃貸物件は分譲と違い売って終わりということはなく、建物がある限りお客様との関係が続いていきます。そのうえで、お客様に安心してできるだけ長期間お住まいいただけるためにも、法令やお客様のご意見などを踏まえ、申込基準や住宅の管理体制などは都度カスタマイズし、明確に開示することで、住宅セーフティーネットとして、その役割を果たしていくことが責務だと思っております。」
より長くサステナブルに。これからの団地のあり方とは
時代や社会環境の変化にともない、「サステナブル」という言葉が浸透しつつある昨今。団地という賃貸住宅事業を継続していくため、URが掲げるメッセージ「社会課題を、超えていく。」とともに、URとしても様々な取り組みを行っています。
「現在、日本国内には約70万戸のUR賃貸住宅がありますが、これまでに建てた団地は当然、時間とともに古くなっていきます。ただすべてを『建て替え』とするのではなく、住宅をリノベーションしてできるだけ長く快適に使っていただけるようにしています」
「URとして経営面はもちろん、民間企業と協力したデザイン性のあるリノベーション物件をリリースしたり、自治体と協力して団地にお住まいの方や地域の方が団地の公園や集会場に集まって楽しめるようなイベントを開催したり、コミュニティの形成を促したりしています。これからも団地が長く人々に愛されるように、これからもいろいろな取り組みを通じてみなさんに知ってもらえたらと思っています」
“思いやり”が住み心地のよいまちづくりを叶える
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世の中が大きく変わったこの20年のあいだに入社し、さまざまな部署で多角的にキャリアを重ねていった大塚は、まちづくりにおいて大切にしていることを次のように話します。
「まちづくりというのは、対応する幅がとても広い分野だと思います。団地の建設・維持だけでなく周辺環境の整備や維持管理に加え、災害対策や災害復興などどちらかというと公的要素が高い部分があります。社会インフラ作りとも言えるので、“人々が安心して長く住み続けられる環境とはどういうものか”を土台から考えるには、思いやりがとても必要になってきます。そのため、思いやりの心や助けあう気持ちは普段からとても大事にしています。それは団地に住む人に対してだけでなく、社内の人に対しても同じです。まちづくりは一人ではできないことですから。それは私が先輩たちから自然と教わってきたことであり、URとして誇れる組織文化だと思っています」
かつて就職面接の時に感じた、UR職員の人たちの優しさや真面目さは、この思いやりや助け合いの精神が根付いているからだと語る大塚。大好きな団地がこれからも長くサステナブルにあり続けるために、幅広いフィールドでの経験を活かしながらまちづくりに取り組んでいきます。
仕事のマストアイテムは、URの住宅情報パンフレット「住まいガイド」
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最後に、仕事で欠かせない必須アイテムを紹介してもらいました。見せてくれたのは、URの賃貸住宅物件を検討されるお客様にもお渡ししている住宅情報のパンフレット「住まいガイド」。物件情報だけでなく、入居時の条件から退去時のルールまでの一連の情報がわかりやすく記載されています。
「お客様にご説明するにあたり、職員もよく見ています。地方ごとに分かれていて、アナログではありますが、すべてが網羅されているのでとても見やすいんです。私は机のすぐ手に取れる場所に置いていますし、外出時は持ち歩くこともあります」
「社会課題を、超えていく。」ことを目指し、まちづくりを支えるURの職員たち。第3回「#まちづくりの達人」ではどのような職員が登場するのでしょうか。次回もお楽しみに。
取材・執筆:牛玖まり
写真:梅沢香織
編集:福津くるみ